みなさん!はじめまして、佐藤研M1のNoelです。
さて、突然ではありますが、「7月11日は何の日かご存知でしょうか?」
(高校時代の友人のご家族がセブンイレブンを数店舗経営されており、毎年7月11日には通っていた予備校に差し入れを持ってきてくれたので、セブンイレブンの日なのかな?と僕は思っていたのですが...)
たしかに「セブンイレブンの日」として定められているそうなんですが、これ以外にも”ある記念日" になっているようなんです!
それは...「世界人口デー」国連人口基金が定めた記念日で、
1987年に総人口が50億人を突破したことを契機としてつくられた日だそうです。
現在、人口は70億人を超え、今後も世界全体では人口が増加することが予測されています。他方で、その内訳は地域によって様子が異なっており、先進国を中心に少子高齢化などにより人口は減少し、途上国などは大きく増加すると考えられています。
人口動態の変化は多くの社会問題と関連しています。例えば、少子高齢化による人口減少は持続的な社会保障制度の維持へ影響を与えることが考えられますでしょうし、途上国での急激な人口増加は、気候変動問題などとも相まって、社会の脆弱性を表面化させる懸念があるでしょう。
このような人口問題に加え、資源問題や食料問題は、「人類全体の脅威として、人類全体で取り組んでいかなければならない地球規模の課題」として向き合っていく必要があるのではないかと考えます。
特に、人口が大幅に増加している後発発展途上国などにおいては、コムギ・コメ・トウモロコシをはじめとする穀物などの安定的な食料供給は喫緊の課題になりつつあります。
世界で最も栽培されている作物であるコムギを例にとると、ある試算では2050年までに、増え続ける途上国のコムギの需要をまかなうために60%以上の増産が必要であるにも関わらず、気候変動などの影響によりその生産量は20ポイントほど減少することが予測されています。
安定的な食料供給を実現するためには、コムギをはじめとする作物が変化する環境に対応できるような耐性を備えたり、収穫量を向上させることが期待されています。そのためには、コムギの遺伝的特性を熟知する必要があり、「ゲノム」という概念が議論の中心に置かれてきました。
「ゲノム」とは、1920年にドイツ人植物学者であるハンス・ヴィンクラーにより提唱された概念で「配偶子が有する染色体のセット」であるとされました。その後、日本人植物遺伝学者である木原均(きはらひとし)は、「生物の生存に必須な最小限の染色体のセット」と定義しました。木原は倍数性植物の研究からゲノムを定義したのですが、この倍数性の植物こそコムギだったのです!
コムギ倍数性の研究からゲノムの再定義を行った木原ですが、その後「ゲノム分析」を行いパンコムギ(フツウコムギ)の祖先を突き止めることに成功。実際に祖先を調査するため、1955年戦後初の総合学術調査団を指揮し、カラコルム(現在のパキスタン)探検隊長として、学際的なフィールドワークを展開したのです。
木原の「緻密な基礎研究」、さらに「鋭い洞察力による倍数性研究からのゲノム説提唱」、加えて半端じゃない「行動力による戦後初の海外フィールドワークに基づく自説の裏付け」これら3点が研究者のスゴさ、カッコよさなのではないかと思います...
最後に、これからの修士生活において、緻密さ、鋭い洞察力、臆することない行動力を身につけ、実社会での課題解決につなげることができるように努力していきたいなと思います!
P.S.
木原によるカラコルム探査なんですが、戦後間もない研究者の貴重な海外フィールドワークとして「記録映画」になっています。ご興味のある方はぜひ観賞ください!
By Noel.
Reference
国際連合広報センターHP, 世界人口デー(7月11日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ
Food and Agriculture Organization of United Nations HP, FAOSTAT
http://faostat.fao.org/site/339/default.aspx (2021/7/11)
Kagaku to Seibutsu 55(2): 105-112 (2017), Yuichi Handa, コムギのゲノムを読むゲノム研究はコムギ研究とともに始まった
H. J. Braun, G. Atlin & T. Payne: “Climate Change and Crop Production,” ed. by M. P. Reynolds, CABI, 2010, pp. 115–138
CIMMYT: WHEAT—Global Alliance for Improving Food Security and the Livelihoods of the Resource-Poor in the Developing World, http://repository.cimmyt.org/xmlui/bitstream/handle/10883/669/94267.pdf?sequence=1
(2021/7/11)
H. L. Winkler: “Verbreitung und Ursache der Parthenogenesis im Pflanzen- und Tierreiche,” Verlag Fischer, 1920.
K. Tsunewaki: “Advances in wheat genetics: From genome to field,” Springer, 2015, p. 3.
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