こんにちは。
2022年も始まりもう1ヶ月が経つそうで、時の流れの速さを実感しています。
大学院の秋学期の授業も終わり、大学院に入院して一年が経とうとしています。
今回は他大学のプログラムに参加して考えたことがあるので、そのことを共有したいと思います。
今回のブログのテーマは「研究はアートだ。」です。
私はこの夏から、秋田公立美術大学主催の地域考プログラム「AKIBI複合芸術ピクニック 秋田/沖縄」に参加していました。
出身が沖縄で学部が秋田で過ごし、修士研究を沖縄で行っている私にぴったりだと思い、この半年間プログラムに関わってきました。
この一月に北は北海道から南は沖縄まで11名の参加者が秋田に集まりました。
美大の学生から、陶芸家、ウェブデザイナー、私のような修士生まで多種多様な人が自分なりのアプローチで「地域」を考察していきました。
学部時代は国際教養学部、今は国際協力専攻と、芸術とは程遠い勉強をしてきた私にとっては慣れないことも多かったですが、プログラムは非常に充実していて、そこで気づいたこと、出会った人々は今後の人生の糧になると実感している次第です。
プログラムの内容はここでは端折らせて頂きますが、一番大きな気づきは、僕が大学院でやっていることと「芸術」というのはそう遠くないし、研究という活動も「アート」だなと確信したことです。
「アート」と聞くと、絵を描く、音楽を作る、小説を書くなど、特別な才能や教育を受けた人だけができることだと考えられがちです。
私自身もそうやって考えてきました。
しかし、ARTの語源を調べてみるとラテン語のars、そしてギリシア語のtechneに由来し、この言葉は学問と技術、という二つの意味を内包しています。
近代以前の偉大な学者を思い返してみると、古代ギリシャの哲学者たちに、中世の芸術家たち、その時代には学問と技術の境目は非常に曖昧であったと思います。
今の社会では、大学院進学がキャリアアップとして見られることが増えたため、実感しにくいと思いますが、実は研究も芸術の一つであるということが、ここからわかると思います。
また、上野千鶴子著の「情報生産者になる」によれば、研究で最も大切なことは自身の感じるノイズに気がつくことである、と説明されています。
そもそもこれを読んでいるあなたは何故大学院に進学したいと考えているのでしょうか?何故そのことを研究したいと思ったのでしょうか?
きっとそれは、生きてて何か分からないけどモヤモヤする、社会に対して何かがおかしいと感じているからだと思います。
それはあなただから感じていることです。
あなた以外の他の誰も、あなたの感じているように感じることはできないし、あなたの見ているように世界を見ることはできません。
あなたの世界を論文という一つの形で表現する行為が、研究という芸術活動だと言えるのでないでしょうか。
私たち、佐藤仁研究室で扱われる環境問題や貧困問題といったテーマは実務の社会とも親和性が高く、芸術とは遠い分野の研究にも思われます。
しかし、私たちが問いているのは、それらの課題の解決方法ではありません。
むしろ、私たちが行っていることは課題の複雑化とも呼べる行為だと思います。
それらの課題がなぜ課題なのか、それらの問題は誰にとって問題なのか。
社会に課題として扱われているテーマに正面から疑問を投げつけます。
「開発」の世界はとても綺麗で、善に溢れているようにも見えます。
開発途上国の人々のために道を作る。
生物多様性保全のために国立公園を作る。
はたまた、地球のために脱炭素社会を実現する。
絶対善が仮定されているその世界で、社会の複雑性そして不確実性を肯定し、問いを投げかける。
それが、私たちの研究室が行っている研究です。
私の中で「アート」の一つの定義は「世界の不確実性を肯定し表現する行為」です。
「発展」というのは不確実性を減らし、確実性を社会の中で増やしている現象とも考えられます。
例えば、農業は天候や害虫といった自然被害を乗り越え、収穫量を確実に安定させるためにこれまで品種改良や農耕技術の革新が進められてきました。
発展した現代の農業では、あたかも不確実性は存在しなく、確実に生産が安定しているようも見えます。
しかし、その確実性を紐解いてみると、化学肥料による土壌劣化、技術依存と石油・原子力エネルギーへの依存、と常に不確実性はそこに存在しています。
このことはベック著「危険社会:新たな近代への道」が分かりやすいです。
「開発」という不確実性を減らし、確実性を増やす行為に対して、その確実性に不確実性を見いだし「開発」を問い直すのが私たちの研究、そしてアートだと考えています。
自分で書いてて、「開発研究」というのが「開発」へ真っ向から向き合っていると考えると非常にワクワクしてきました。
書き出しから少しズレてしまいましたが、今回はここら辺でやめておきたいと思います。
佐藤仁研究室の雰囲気がこのブログから伝われば嬉しいです。
Toshi
参考文献
上野千鶴子 「情報生産者になる」
ウルリヒベック 「危険社会:新たな近代への道」
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